「休職=甘え」「逃げたら負け」「社会人として失格」…そんな思い込みにとらわれて、心や体を壊すまで働いてしまう人は少なくありません。日本社会にはまだまだ「長時間働く=美徳」「休む=甘え」という根強い価値観があります。しかし、それは時代遅れの考えです。
近年では、心の健康を守るために休職を選ぶ人が増えており、企業も「働き方改革」や「メンタルヘルス対策」に本腰を入れ始めています。このブログでは、休職に対するネガティブなイメージを払拭し、「体や心を守るための前向きな選択肢」として休職を見つめ直すための情報をお届けします。この記事を通じて、あなた自身が、「無理をするより、立ち止まることの大切さ」に気づけるきっかけになれば幸いです。
【第1章】休職とは?制度の仕組みと正しい理解
1-1. 休職の基本的な意味
休職とは、病気やけが、家庭の事情、メンタルヘルスの不調などを理由に、一定期間業務から離れる制度です。会社の就業規則や労働契約によって内容が異なりますが、主に以下のようなケースで使われます:
- うつ病、適応障害などの精神疾患
- 長期治療が必要な病気やけが
- 家族の介護や育児による一時的な離職
一時的に働けない状態であっても、雇用契約を維持したまま会社に籍を残すことができる制度であり、将来的に職場復帰するための準備期間として位置づけられています。
1-2. 休職と欠勤、退職との違い
「欠勤」は一時的に仕事を休むことで、無断欠勤の場合は懲戒の対象になることもあります。「退職」は雇用契約を終了させることであり、復帰の見込みがありません。一方、「休職」は雇用関係を継続しながら、一定期間の業務停止が認められた状態です。
また、休職中は会社側も就労義務を免除する一方で、職員の回復と復職を前提とした支援体制をとることが求められています。これは社員の健康を守るためだけでなく、企業にとっても人材の損失を防ぐ合理的な対応です。
1-3. 休職中の給与・補償について
通常、休職期間中は給与が支給されないことが多いですが、健康保険から「傷病手当金」が支給される場合があります。これは給与のおよそ3分の2が最長1年6ヶ月支給される制度で、生活の支えになります。
さらに、企業によっては独自に給与の一部を支給したり、福利厚生としてサポート制度を整備している場合もあるので、自分の所属企業の就業規則を確認することが大切です。
傷病手当金については、【休職者必見】けが・病気・うつ病などで受け取れる傷病手当金の申請条件・受給額・手続き方法についてにて詳しく解説しています。
【第2章】なぜ「休職=逃げ」ではないのか?その誤解と真実
2-1. メンタルの不調は「甘え」ではない
真面目で責任感が強い人ほど、自分の体調や心の異変に気づいても我慢してしまいがちです。しかし、メンタル不調は風邪やインフルエンザと同じ「病気」です。無理を続ければ、より深刻な事態を招くことになります。
近年では脳科学や精神医学の発展により、ストレスが脳や神経に与える具体的な影響も明らかになっています。つまり「気の持ちよう」ではなく、実際に脳内の神経伝達物質のバランスが崩れているのです。
2-2. 早期の休職は回復への近道
症状が軽いうちに休職を選べば、回復も早く、社会復帰もスムーズです。逆に我慢を続けて状態が悪化すると、治療も長期化し、再就職にも影響が出かねません。自分を守るためにも、適切なタイミングでの休職が重要です。
また、早期の休職は周囲への説明もしやすく、必要に応じて職場の配置転換や仕事内容の見直しがしやすいというメリットもあります。
2-3. 法律・制度面から見た休職の正当性
休職は法律で守られている正当な権利です。企業の就業規則に休職制度が明記されていれば、利用することに後ろめたさを感じる必要はありません。厚生労働省も「職場のメンタルヘルス対策」を推進しており、社会全体が変わりつつあります。
傷病手当金や労災補償など、法的制度を活用することで、経済的な不安を和らげながら休職に集中できます。
【第3章】自分を守るために知っておきたい!休職前のセルフチェック
3-1. 危険サインを見逃さない
以下のような症状が続いていれば、心や体が悲鳴を上げているサインです:
- 毎朝起きるのがつらい
- 食欲がない、または過食
- 頭痛、胃痛、動悸が頻発する
- 何をしても楽しく感じられない
- 仕事のことを考えると吐き気や不安が強くなる
- 些細なことで涙が出る、怒りが爆発する
これらのサインを見逃さず、「自分を責める前に自分を守る」という意識を持つことが重要です。
3-2. 誰に相談すればいい?
- 社内の産業医:まずは企業の産業医へ。
- 人事・上司:直属の上司よりも、信頼できる人に話すのがベスト。
- 心療内科・精神科:診断書の取得と適切な治療が受けられます。
- 地域の相談窓口:メンタルヘルス支援センター、労働基準監督署など。
- 家族や友人:身近な人に話すことで、気づけることもあります。
【第4章】実際に休職するまでの流れと注意点
4-1. 休職を決断したら最初にすべきこと
- 心療内科を受診し、就労困難の診断書をもらう
- 信頼できる上司や人事に報告
- 就業規則を確認し、必要書類を準備
- 必要であれば職場のEAP(従業員支援プログラム)に相談
4-2. 申請から休職スタートまでの流れ
- 診断書を人事へ提出
- 会社の指示に従って休職願を提出
- 手続き完了後、休職開始
4-3. 傷病手当金の申請
健康保険組合に「傷病手当金」の申請を行うことで、休職期間中の生活が保障されます。申請には医師の診断書や会社の証明が必要なので、余裕をもって準備を進めましょう。
【第5章】休職中の過ごし方と心のケア
5-1. 「休むこと=回復の第一歩」
休職中は「何もしなくていい」という自分への許可が大切です。自責の念に駆られず、自分をいたわることが優先です。
「休職しているのに何もしていない」と焦る人も多いですが、まずはしっかりと心身を休めることが最優先。自然の中で過ごしたり、趣味に触れることも、回復への一歩です。
5-2. 生活リズムの安定を意識する
- 毎朝同じ時間に起きる
- バランスの取れた食事
- スマホやSNSから距離を置く
- 散歩など軽い運動を取り入れる
- 夜はリラックスできる音楽や読書で過ごす
5-3. メンタル回復に役立つ習慣
- 認知行動療法
- ジャーナリング(日記を書く)
- アートや音楽で気分転換
- オンラインカウンセリングの活用
休職中の過ごし方でわからないことがあれば、休職中のおすすめ過ごし方!心と体をリフレッシュする方法 を参照ください。
【第6章】復職の準備とタイミング
6-1. 医師の復職許可を得る
日常生活に支障がなくなったら、復職について主治医に相談しましょう。職場に復帰できるレベルか、無理がないかを判断してもらうことが重要です。
6-2. 会社との面談・調整
復職前には、人事や上司との面談が行われます。配置転換、勤務時間の調整、リモートワークの可否などを話し合いましょう。
6-3. リワーク支援の活用
リワーク(職場復帰支援)プログラムを利用することで、社会復帰への不安を軽減できます。復職までのステップを段階的に踏むことが大切です。
休職から復職する道もありますが、そのまま退職する道を選ぶことも可能です。迷っているのであれば、休職から復職するべき?退職するべき?選択に迷ったときの考え方を参照ください。
【第7章】休職経験をキャリアに活かす方法
7-1. 前向きなエピソードとして伝える
休職=マイナスととらえるのではなく、「心身の調整を行ったことで、自分の働き方を見直すきっかけになった」と伝えられれば、面接時にもプラスに働きます。
7-2. 自己理解が深まったことを示す
休職中に自分の価値観やキャリアビジョンを見つめ直した経験は、成長の証です。その結果として「こういう働き方をしたい」「こういう環境が合っている」と具体的に説明できると、説得力が高まります。
まとめ:休職は“勇気ある選択”である
人生100年時代、キャリアはマラソンのようなもの。途中でペースを落としたり、水分補給をすることが、長く走り続けるためには欠かせません。
「もう限界かも…」と思ったときに、無理をせず休む選択肢を持つこと。それは“逃げ”ではなく、“守る”という勇気ある行動です。あなたの心と体は、何よりも大切にされるべきもの。どうか、自分をいたわる選択を恐れないでください。
少し立ち止まったからこそ見える景色もあります。無理せず、自分らしいペースで進む人生を、あなたの手で選んでいきましょう。
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