うつ病や精神的なストレスによる病気で休職することになった場合、収入がなくなることに対して不安を感じる方も多いでしょう。病気・ケガ・うつ病などで働けなくなったときに活用できるのが「傷病手当金」です。この制度を理解しておくことで、休職中でも一定の収入を確保することができます。給料の約3分の2を最長で1年半受け取ることができ、その間は療養に専念することができるのです。
この記事では、うつ病などの精神疾患による休職時に受給できる「傷病手当金」について、受給条件や金額、申請方法を詳しく解説します。
傷病手当金とは?
傷病手当金は、健康保険に加入している被保険者がケガや病気で働けなくなり、収入が減少した場合に支給される手当です。特に、うつ病や適応障害などの精神疾患による休職も対象となるため、精神的な健康問題で休職中の方にも安心なサポートとなります。
この手当は、会社を通じて健康保険に加入している人が対象で、最長1年6カ月間の間、月々の収入の一部を補填してくれます。傷病手当金があることで、治療に専念しやすくなることが大きなメリットです。
受給条件を満たしていれば休職中の給与が支払われない間、健康保険から傷病手当金が支給されます。傷病手当金は会社員が加入する健康保険から出ています。(健康保険は通常給料から天引きで支払っている)
健康保険に加入して受給条件を満たしていればパートやアルバイトであっても傷病手当金は受給できます。
国民健康保険(国保)には傷病手当金制度はありませんので、自営業者や個人事業主の方は対象にはなりません。
傷病手当金の受給条件
傷病手当金を受給するためには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガで療養中であること
- 働けない状態であること
- 連続して3日間以上の休業があること
- 休職中に給与の支払いがないこと
詳しく以下で説明します。
1. 業務外の病気やケガで療養中であること
傷病手当金は業務外の病気やケガが対象です。うつ病や精神的なストレスが原因での休職も含まれますが、労災が原因の場合は別の給付制度を利用することになります。
2. 働けない状態であること
病気やケガにより、仕事ができない状態であることが求められます。これは医師の診断書によって証明される必要があります。自分で働けない状態だと思っていても、医師の判断がなければ対象にはならないので注意が必要です。
3. 連続して3日間以上の休業があること
傷病手当金は、連続する3日間の待期期間(支給が始まるまでの期間)があります。待期期間には土日・祝日等の公休日も含まれます。この3日間は有給休暇を使っていても問題ありませんが、その後の休業日から傷病手当金が支給されます。
4. 休職中に給与の支払いがないこと
休職中に給与が支払われている場合は、その分を差し引いた額が支給されます。例えば有給休暇を使っている場合は会社から給与が支払われますので、有給中は傷病手当は支給されません。給与が支払われていない場合や、給与が傷病手当金よりも少ない場合は、差額が支給されます。
傷病手当金の金額の計算方法
傷病手当金の支給額は、標準報酬日額の3分の2が基準となります。標準報酬日額とは、健康保険における給与の基準額で、次の計算式で求められます。
この標準報酬日額を算出する給与には基本給のほかに通勤手当や残業手当など各種手当が含まれます。ただし賞与は含まれません。つまり傷病手当金の受給額はざっくり言うと、賞与を除いた額面の給与の3分の2程度です。
この標準報酬日額の3分の2が1日の傷病手当金として支給されます。例えば、月給30万円の場合の計算は次のようになります。
月給30万円の場合の傷病手当金
- 標準報酬日額:30万円 ÷ 30日 = 10,000円
- 1日あたりの支給額:10,000円 × 2/3 = 6,666円
1カ月に20日間の支給があった場合、133,320円(6,666円 × 20日)が支給されます。
受給期間
傷病手当金の受給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月までです。ここでいう支給開始日とは待期期間3日のあとの休職が始まった日が支給対象になりますが、その支給対象となった最初の一日が支給開始日となります。
もし途中で復職して給与の支払いを受けたとしても、受給期間にカウントしません。よって再度休職した場合も復職中の期間は含めず、最初の休職時点からの支給期間から数えて、最長1年6か月分までとなります。
通算で1年6ヶ月以内であれば、再び休職した期間も受給対象になります。
令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されました。
- 同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象となります。
- 支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能になります。
傷病手当金の申請方法
傷病手当金の申請は、以下の流れで行います。
1. 申請書を入手
申請書は、加入している健康保険組合または協会けんぽのウェブサイトからダウンロードできます。また、会社の人事部などでも申請書を受け取ることが可能です。
協会けんぽの支給申請書へのリンクを張っておくので、必要書類等はこちらで確認してください。
2. 必要書類を準備
申請には、医師の診断が必要になります。また会社の勤怠状況についての証明書類も必要です。
申請書作成の流れ(協会けんぽの場合)
- 申請書①と②を自分で記入する
- 申請書④に通院時に主治医の診断を記入してもらう
- 会社に申請書①②③④を送付し、会社のほうで申請書③に記入してもらう
- 会社から、もしくは自分で申請書①②③④を協会けんぽに送付する
※退職後の申請の場合は申請書③は不要となるため申請書①②④を協会けんぽへ送付すればOK
3. 書類の提出
必要な書類をそろえたら、健康保険組合や協会けんぽに提出します。提出後、審査を経て支給が決定されます。
4. 給付金の受給
申請が受理され、手当金の支給が決定されると、指定した銀行口座に振り込まれます。通常、数週間から1カ月程度かかることがあります。特に初回申請時は審査に時間がかかるため1か月から申請のタイミングによっては2か月かかります。私の経験でいうと初回申請は1か月ちょうどくらいで振り込みがされました。
協会けんぽの場合、申請が受理されると「支給決定通知書」が自宅に届きます。圧着はがきで中には申請した期間や支給期間、あれば減額期間や不支給期間などが記載されており、振込される金額と振込年月日が記載されています。
申請時の注意点
傷病手当金を申請する際には、いくつかの注意点があります。
- 継続的な申請が必要
病状が続く限り、期間内であれば申請を続けることができます。申請には医師の診断が必要になりますので通院は定期的にするようにしましょう。 - 申請する期間
基本は1カ月ごとの申請が必要です。まとめて2か月分や3か月分申請することも可能ですが、医師の診断が必要になるため基本は1か月ごとに申請するのが望ましいです。また、会社の給与のルール次第ですが月末締めの会社であれば1日~31日の分を申請すると処理が複雑にならず、会社の手続きがスムーズに進みます。 - 退職後の手当金受給
退職後も、退職前に傷病手当金の受給条件を満たしていれば、最長1年6カ月間、引き続き手当金を受け取ることができます。退職日に出社しないことが条件となっていますので職場への挨拶などで出社扱いにならないように注意してください。
【休職者必見】うつ病などで受け取れる傷病手当金の申請条件・受給額・手続き方法について まとめ
うつ病などで休職した際に役立つ傷病手当金は、一定の条件を満たすことで最長1年6カ月間、月々の収入の一部を補填してくれる重要な制度です。受給条件や申請方法をしっかりと理解し、スムーズに手続きを進めることで、経済的な負担を軽減しながら、治療に専念できる環境を整えましょう。
傷病手当金は病気・ケガで働けないときに、お金のことを気にせずに休めるありがたい制度です。特に、うつ病などの精神疾患で休職中の方は、不安なことを少しでも減らすことが重要になりますので、早めに手続きを進め、必要なサポートを受けることが大切です。権利ですのでぜひこの制度をうまく使ってくださいね。
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