退職の際に気になるのが「失業保険(雇用保険)の受給資格」です。通常、自己都合退職では失業保険の受給条件が厳しく、2ヶ月(5年以内3回目の退職からは3ヶ月)の給付制限があります。しかし、特定の条件に当てはまれば「特定受給資格者」や「特定理由離職者」として扱われ、自己都合退職でも会社都合退職と同様の条件で失業保険を受給できる場合があります。
本記事では、特定受給資格者や特定理由離職者についての解説と、自己都合退職を会社都合退職に近い扱いにするための方法を詳しく解説します。
特定受給資格者とは?
特定受給資格者とは、会社の都合によってやむを得ず退職することになった場合に、会社都合退職として扱われる受給資格者を指します。具体的には以下のケースが該当します。
- 会社の倒産や経営不振による解雇
- 事業の縮小やリストラによる整理解雇
- 労働条件の大幅な変更(賃金カット、長時間労働の強制など)による退職
このような理由で退職した場合、自己都合退職とは異なり、すぐに失業保険を受給できるうえに、給付制限もありません。
特定理由離職者とは?
一方で、特定理由離職者とは、自分の意思で退職したものの、その退職理由がやむを得ない場合に認定される受給資格者です。以下のような理由での退職が該当します。
- 健康上の理由での退職
- 配偶者の転勤に伴う転居による退職
- セクハラやパワハラによる退職
- 会社がブラック企業化し、労働環境が著しく悪化(長時間残業の強制など)した場合の退職
これらの理由で退職した場合、通常の自己都合退職よりも有利な条件で失業保険を受給することができます。具体的には、給付制限がなく、すぐに受給が開始される点が大きなメリットです。
「特定受給資格者」「特定理由離職者」に自分が該当するかどうかわからない場合は、下記ハローワークのリンクを参照ください。判断が難しい場合はハローワークの窓口で直接確認することをおすすめします。
自己都合退職と会社都合退職の違い
失業保険の受給条件
自己都合退職と会社都合退職の大きな違いは、失業保険の受給条件です。
自己都合退職の場合
- 失業保険の受給は2ヶ月(5年以内3回目の退職からは3ヶ月)の給付制限後から開始
- 失業保険の受給期間が会社都合退職より短い
雇用保険加入期間 /退職時の年齢 |
1年未満 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|
全年齢 | ― | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合退職の場合
- 退職後、7日間の待期期間が終わればすぐに失業保険の受給が開始
- 受給期間が自己都合退職よりも長く設定されている
雇用保険加入期間 /退職時の年齢 |
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
会社都合退職のほうが、失業保険の面で圧倒的に有利な条件となります。会社都合で退職した場合、所定給付日数は自己都合退職よりも長く設定されています。また、会社都合の退職者には2ヶ月間の給付制限はありません。7日間の待期期間を終えれば次の認定日から失業保険を受け取ることができます。
国民健康保険や住民税の減免制度
失業保険以外でも、「特定受給資格者」「特定理由離職者」にはメリットがあります。
「特定受給資格者」「特定理由離職者」には国民健康保険と住民税の減免制度を設けている自治体があります。国民健康保険料と住民税を安くすることが可能なためお住いの市区町村のWEBサイトで確認するか窓口で聞いてみましょう。
自己都合退職を会社都合退職にする方法
自己都合退職を会社都合退職にする方法は、特定理由離職者や特定受給資格者として認定されるかが鍵です。そのためには、以下の点に注意することが重要です。
1. 退職理由を明確に記載する
退職時に提出する退職届や会社とのやり取りでは、退職理由をできるだけ具体的に記載しましょう。労働条件の変更やハラスメントなどの理由がある場合、それを明確に伝えることで、特定理由離職者として認定される可能性が高まります。
2. 健康上の問題を証明する
もし健康上の理由で退職する場合、医師の診断書を取得し、ハローワークに提出することで、特定理由離職者として認定されることがあります。
3. 労働条件の変更を記録する
会社が労働条件を一方的に変更し、生活に支障をきたす場合も特定受給資格者として認められる可能性があります。そのため、労働契約書の変更や給与明細などの証拠を揃え、退職時にこれらの変更が原因で退職することを明確に示しましょう。
4. ハローワークで正しい情報を伝える
退職後、ハローワークで失業保険の申請をする際、正確な退職理由を申告することが重要です。会社が発行する離職票に自己都合退職と記載されていても、ハローワークで退職理由を確認し、必要な証拠を提出することで、特定理由離職者として認定される場合があります。
「特定受給資格者」や「特定理由離職者」の認定を受けることには大きなメリットがあるため、該当する可能性がある場合は、必ず必要な手続きを行い、その資格を得るべきです。退職時には、会社に対して特定受給資格者または特定理由離職者としての扱いを求めることが重要です。自ら積極的に声を上げなければ、会社は自己都合退職として処理する可能性があります。
会社は基本的には会社都合退職にすることを嫌がり、なるべく自己都合退職にしたがります。理由は【会社都合退職の真実】デメリットや企業が避けたがる理由、面接で不利にならない対策で詳しく解説しています。
自己都合退職を会社都合退職に近づけ有利に!特定受給資格者・特定理由離職者の認定ポイント まとめ
自己都合退職は一見不利な条件が多いですが、特定受給資格者や特定理由離職者として認定されれば、失業保険の受給条件が大幅に有利になります。退職理由を明確にし、必要な証拠を揃えることで、自己都合退職でも会社都合退職に近い扱いを受けられる可能性があるのです。
もし退職を検討している場合は、まず自分がどの受給資格に該当するかを確認し、退職後の手続きをスムーズに進めるためにしっかりと準備をしましょう。
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